2014年4月のエントリー 一覧

旅行前からずっと、必ず行きたいと思っていた「聖ニコラス教会」。

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最初、この教会の前に来た時は「あれ、道を間違えたかな?」と思ってしまったほど、こじんまりとした佇まい。でも中に収められている展示物は、どれも非常に見応えのある素晴らしいものばかりでした。

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聖ニコラス教会は、13世紀前半にドイツ商人居住区の中心に建てられた教会で、非常時には要塞としても役立てられたそうです。1944年の空爆で破壊されたために、残念ながらも原型の内装はまったく残っていない。外観のみが修復・再現され、現在は美術館&コンサートホールとして利用されています。

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入場料は、3.20ユーロ。安い!しかも、ガイドブックでは「撮影不可」と書いてあったけど、写真撮影もOKでした(フラッシュは不可)。

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展示室に入って最初に感激したのがこの展示作品。なんという悪魔的な美しさ...。教会にあった祭壇の一部でしょうか。それとも富豪の商人の家にあった実用品でしょうか。目眩がしそうになるほど濃密な装飾。

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教会の内側には、高い塔の上から光が斜めに差し込み、美しい陰影の世界を造り出していた。この教会の構造は、「灯り」によって何かしらの対象物を照らし出すことより、「陰」を演出することにこそ大事な意図があるように感じました。

この荘厳な空間で演奏されるオルガンは、どんな美しい音を響かせてくれるのでしょう。コンサートの機会に、ぜひ立ち会ってみたかったな。

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これはリューベックの職人、ヘルメン・ローデ作の主祭壇(15世紀)。この教会のなかで、もっとも貴重な展示物のひとつ。表側の左右には聖ニコラスと聖ヴィクトルの生涯が描かれています。そして、この祭壇は二十の観音開きの構造になっていて、中央を開くと彩色された聖人像が彫られているらしいのですが、閲覧できる機会は滅多にないそうです。

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この妖艶な美しさに、ふと、クラーナハの官能的なヴィーナス像を思い起こしました。

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その他にも15〜16世紀に作られた祭壇などがいくつか展示されていましたが、絵の部分よりも周囲の装飾部が面白かった。こういう細部にこそ、エストニア独自の文化が息づいていると感じます。

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そして、この聖ニコラス教会を世界に知らしめているのは、何と言っても、この「死のダンス」が保存されていること。リューベックの画家・彫刻家のベルント・ノトケの手によるもので、15世紀後半に完成した作品。画中には左から、法王・皇帝・皇女・枢機卿・国王が並んで描かれ、不気味な骸骨たちと共に「死の舞踊」を繰り広げている。(作品が厳重に管理されててうまく撮れなかったので、こちらのサイトなどをご参照ください。→http://www.dodedans.com/Eest.htm)

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横長に展開する作品なのですが、現存するこの絵は作品の一部分のみで、オリジナルのそれ以外の作品は失われてしまっています。本来は全長30メートルくらいの作品で、教会の室内の壁面をぐるりと囲む形で作品が配置されていたようです(→★参考サイト)。

「死のダンス」の背景にあるのは、14世紀のペスト大流行という大事件。中世ヨーロッパでは、ペストだけでなく疫病による死者は相当な数だったと想像されるし、魔女狩りや異教徒弾圧といった残虐な殺戮が繰り返され、人々は常に死と隣り合わせにいる状況にあったのでしょう。死の恐怖から半狂乱になって踊り狂う人たちが出現したり、疫病の災いを祓うために骸骨に扮した祈祷師らが街中を歌い踊りながら練り歩く儀式が行われていました。そして「骸骨」と「死の舞踏」というモチーフは、15〜16世紀に至って盛んに描かれるようになります。閉塞した社会状況を反映させて、「王様であろうと極貧の農夫であろうと、死はまったく同じように訪れる。"生"はかりそめ。この世は"死"によってこそ支配されているのだ」...という「現世の無常観」が広く世の中に蔓延し、骸骨たちの図像が様々な場所に刻まれることになるのです。(しかし後の時代にそのような世界観が否定され、それらの作品は破壊・改変されてしまう。この「死のダンス」も上描きされていたが、長い時間を費やして修復された。)

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それにしても、この踊る骸骨たちはなんと生き生きとしていて、鮮やかな存在感を放っているのでしょう。聖人を描くことに飽き飽きしていた画家たちの想像力が、そこに居場所を見い出したようにも思えます。そしてこの絵に大きな魅力を与えているのは、画面中央に描かれたメランコリックな憂いを浮かべた女性の表情。「皇女」という設定になっているようですが、どこかしら少女のような面影を宿しています。焼け残ったのがこの2枚でなかったなら、これほどまでに多くの人に愛される作品にならなかったのではないでしょうか。歴史的な偶然によって部分のみが残されたからこそ、この作品は「死と少女」という魅惑的な、そして文学的なテーマとも結びついたのかもしれません。

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聖ニコラス教会で見た「死のダンス」は、そんな連想を誘いつつ、忘れがたく妖しい美しさを放っていました。〈続〉

古本屋やニット屋のお店に寄り道しつつ、曲がりくねった細い路地を歩いていたら、ぽっかりと大きな広場に抜けました。どこからか陽気な音楽が流れ、広場にはたくさんの露店が並び、大勢の人で賑わっていました。そこは「ラエコヤ広場」という、旧市街の中心地だったのです。

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思いがけず地元のカーニバルに遭遇したようで心が踊りました。 後で知ったのですが、この日は収穫祭のお祭りだったようです。

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あちこちの露店に楽しそうな商品が並んでいて、見たことのない食べ物もいろいろ。美味しそうなものを見つけたら、目で訴えて少しだけ試食させてもらったり。あっちのお店こっちのお店と渡り歩いていると、楽しすぎて時間を忘れます。。

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広場のステージでは、民族音楽の歌や踊りの演奏も。その横では子どもたちも楽しそうにリズムをとって踊っていました。

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これはライ麦のパン。表面は黒くなっていますが、中身は意外に柔らかくて美味しかった。しっかり食べごたえのあるパン。

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ここのビールは、ものすごく美味しかった。てっきりエストニアの地ビールと思って数本お土産に買ってみたのだけど、買い物しながらこのお店の方と少し話をしたら、なんとラトビア産(エストニアとラトビアの国境に近い地方)のビールでした。でもこのあとバルトで飲んだ数々の美味しいビールの中でも、特別に美味しいと感じたビールでした。

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露店での買い物も満喫したので、広場近くのレストランでランチをとることに。行き当たりばったり選んだ「PEPPERSACK」というお店。ガイドには載っていなかったけど、とても人気のあるレストランのようでした。

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店内は隅々まで中世風な演出をしてあって、とても素敵な雰囲気。ただ、いかにも観光客相手という感じで、「これは失敗だったかな...」思ってしまったり。でも実際に出てきた料理は、どれもとっても美味しくて大満足。

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メニューがさっぱりわからなくって、何を注文したのかよく覚えてないのだけど(笑)、とにかくみんな美味しかった! すぐ隣にも「Olde Hansa」という、同じく中世をテーマにした有名なレストランがあるのですが、このお店もおすすめ。〈続〉

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★PEPPERSACK→ http://www.peppersack.ee/

タリンの天気はとても気まぐれ。雨がずっと続くかと思えば、いつの間にか青空が広がったり、それもつかの間突然どしゃ降りになったり。雲が低く流れ、いかにも北欧らしい空模様。

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小雨の降る中、まずは旧市街の北西側のエリアをぶらぶらと、気ままに歩いてみました。旧市街の道はどれも斜めに交差していて、方向感覚を見失います。この路地を歩くのは、迷路のような楽しさ。

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ヴィル門がある東側と同様に、こちらにも見事な城壁が残されていました。雨に濡れた城壁と石畳も風情があってとても素敵。歴史の残り香を感じます。

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この空に突き出た尖塔は、「聖オレフ教会」。おそよ160メートルもある塔は、13世紀においては世界でもっとも高い建造物だったのだそうです。

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旧市街エリアの北端には、「スール・ランナ門」と「ふとっちょマルガレータ」と呼ばれる有名な砲塔があります。

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この横に広がった丸い建物が「ふとっちょマルガレータ」。昔、ここは牢獄として使われていた時代があって、そこで給仕をしていた太ったおかみさんの名前が「マルガレータ」だったのだそうです。建物の愛称として名前を残されるなんて、それほどまでに愛すべき人柄だったのか、それとも牢獄を連想させるくらい恐い人だったのか、さてどっちだったんでしょうね?

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現在では、ふとっちょマルガレータは海洋博物館になっているのですが、残念ながらこの日は閉館していました。建物の中に入ってみたかったのに、残念...。

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通りがかりでみつけたパン屋さん。どれを見てもあまりにも美味しそうだったので、店内にある小さなカフェスペースで珈琲とお菓子をいただきました。すっごく甘かったけど美味しかった。。人気の店のようで、お客さんがひっきりなしに出入りしてました。

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街中のスーパーにも入ってみました。海に面した街だけあって、魚の売場が充実にしてました。海外に来て、こういう現地での日常的な生活の場面に紛れ込んでみるのは、すごく楽しい体験。

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こちらは売店のビールコーナー。こういうところを覗くと、その土地でどのビールがメジャーなのか知ることができますね。SakuのoriginalとHele、A . Le Coq、Alexander 。だいたいこの三銘柄はどこでもあるようです。一通り飲んでやっぱり一番美味しいのはSakuのビール! 500mlの缶で120円くらい。安いです。。

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通りがかりの雑貨屋さんを窓からのぞいたら、すごく素敵な小物が並んでいたので、お店の人に断って写真撮らせてもらいました。

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この色鉛筆をモチーフにしたアクセサリー、すごく面白いですよね。こういう雑貨小物や工芸品の技術とセンスが、エストニアはとても秀でてると感じます。

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愛嬌のある小人たち。全部欲しかったけど、この中の一人だけを連れて帰りました。〈続〉

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