奈良&京都の旅2014 -Category

一夜明け、この日は朝から飛鳥めぐり。空はまだどんよりとしていましたが、雨はすっかり上がっていました。レンタサイクルを借りて、最初に向かったのは高松塚古墳。丘稜の坂道を越えて行くと、いかにも飛鳥らしい美しい風景が広がっていました。

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これがその高松塚古墳。意外な程にこじんまりとした印象。。 

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高松塚古墳と同じ飛鳥歴史公園内にある中尾山古墳。八角形の墳丘をもつ古墳で被葬者は不明。文武天皇陸との説も。坂を上りきったところにあります。自転車で上るのはかなりハード。

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これがかの有名な「亀石」。確かに亀だ。。。(笑)。なんとも愛嬌のある、かわいい顔をしてますよね。道路から少し入ったところ、民家の並びにぽつんとあってびっくりでした。隣の敷地には地元野菜の無人販売コーナーがありました。。 

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「亀石」には、こんな言い伝えがあるそうです。大昔、大和が湖であった頃、対岸の當麻と川原の間に喧嘩が起こった。結果、湖の水を當麻にとられてしまい、たくさんの亀が死んでしまった。その供養として村人たちが作ったのがこの亀石なんだとか。亀石が再び西を向いたとき、災いが起きると云われているそうです。

ところで、「當麻」という言葉に、またここでも出会いました。。やはりもう一度當麻をじっくり回ってみたくなってきました。

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亀石のある細道の先に、聖徳太子誕生の地に建てられた(と云われている)「橘寺」がありました。田園の中にぽつんとある光景はあまりにも地味で、「ここが本当に??」と思ってしまいます...。押し付けがましさがないところが、奈良の良いところ。

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橘寺は、太子建立7寺の一つとされています。本堂に祀られるのは聖徳太子坐像。創建は奈良時代ですが火事で焼失してしまい、現存する寺社は江戸時代に再建されたものなのだそうです。見るべきものは少ないのですが、この地で幼少の聖徳太子が過ごしたかと思うと感慨深い。

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境内にはこれまた不思議な様相の「2面石」がありました。私の持ってるガイドブックでは聖徳太子のことより、この二面石をピックアップしてました(笑)。

聖倉殿(収蔵庫)の前にこんな万葉歌碑がありました。

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「橘の寺の長屋に吾率宿し童女放髪はあけつらむか」巻16-382(作者不詳)

・・・橘寺の長屋で一緒に寝た、あの振り分け髪の少女は、今はもう大人になっているであろうか・・・の意。なんだかちょっと(かなり?)意味深だけど...(^^;)。ノスタルジックな情感を感じる素敵な歌だと私は思う。

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橘寺を出た頃がお昼時になったので、地元で人気の懐石料理のお店「神籬(ひもろぎ)」に行ってみることにしました。このお店のことを紹介してくださったのは、友人の映像作家・竹浪明さん&画家・松岡芽ぶきさん。お二人のおすすめなので行く前からとても楽しみにしていたのですが、期待以上に素晴しい料理に大満足でした♪

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私たちが頼んだのは「季節の会席」。どれも美味しかったけど、中でも天ぷらが格別に美味しかった。薄い衣がさくっとししていて、絶妙な揚げ具合。どの品も、ひとつひとつに心がこもっていて、とても丁寧に手間をかけて作られていると感じます。料理の器も見せ方もとても美しいし、お店の方の対応もあたたかい。

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惜しむらくは、名物の「茶粥」がこの日はなかったこと・・・。餅米を炊いたご飯も美味しかったけど。次回飛鳥に行く時は、必ずここの茶粥を食べてみたいです。

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お腹いっぱいになったところで、「神籬」のすぐ向かいにある飛鳥坐神社へ。この神社の創建については、諸説あって不明なことが多いようですが、『日本書紀』によればその始まりは686年に遡るとのこと。折口信夫の祖父がこの神社の宮司だったそうです。

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飛鳥坐神社では、毎年2月の第一日曜日、天下の奇祭と名高い「おんだ祭り」が催されます。どんな奇祭なのか・・・興味ある方はこちらご覧ください→b9spot.nobody.jp/nara/onda/

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そして、境内のあちこちにこのような陰陽石が点在しています。なぜここに陰陽石がたくさんあるのかよくわからないのですが、飛鳥各所の道端や境界で道祖神として祀られていたものがここに移されたのではないか、と考えられているようです。

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こちらもなかなか立派。これを最初に見つけた人はさぞや興奮したことでしょう。。(笑)

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飛鳥坐神社の脇道を進んでいったら、たまたま出会った藤原鎌足公誕生地「大原神社」。見過ごしてしまいそうな、とても小さな敷地。もう少し手入れしてあげた方がいいのでは?と同情してしまったほど、社は寂しく朽ちています。世の無常を感じますね。。

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そして、大原神社の奥の細道を降りていった先にある「鎌足の産湯の井戸」。周りは荒れ地のようになっていて、云われについての案内板とか何もない状態...。 

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次の向かったのは「岡寺」。西国第七番札所であり、日本最初の厄除け霊場。ここへ辿りつまでの坂道が、自転車で行くのはかなりきつかった。。でも苦労した甲斐あって、なかなか見応えのあるお寺でした。 

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山の斜面に切り込むように寺社が建てられています。本堂自体よりも、周りを囲う山々の景観と一体になった佇まいに風情を感じます。

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本堂の先にある石段を上がっていくと、そこから先はどんよりと暗い山道になっていて、途中に稲荷神社、更にその先には「奥之院石窟」がありました。 

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石窟の入口は大人一人がやっと入れるくらいの大きさで、奥行きは意外に深い。その奥には弥勒菩薩の石仏が鎮座していました。

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奥之院石窟の手前にいたお地蔵さん。緑の苔の衣をまとっていてとても素敵でした。

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岡寺からの坂道を下っていって、やっと辿り着いた「石舞台」。遠くからその姿を目撃した瞬間、胸が高まりました。。

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何度も写真では見ていても実際目の当たりにすると、その存在の異様さに圧倒されます。古墳として本来は地中に埋められているはずのものが、何らかの理由で封土が失われてしまったと考えられていますが、未だに多くのことは今も謎に包まれたまま。

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石舞台の回りはきれいに整備されていて、石室にも入ることができます。石に閉ざされた小さな空間でしばらく呆然と過ごし、遥か遠い世界の出来事に心を馳せてみました。

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周りがきれいに整いすぎてるのが、ちょっと残念な気もしましたが・・・季節折々に姿を変える石舞台は、何度ここに訪れても私たちを遠い世界へと誘ってくれるのでしょう。

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石舞台を後にし、自転車で走りながらなかなか見つけられず苦労した「酒船石」。小高い丘陵地の林の中にひっそりと置かれていました。私の周りでは「酒船石」と言えば「三つ目がとおる」を思い起こす人が多いようです。。(^-^)

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大きさは思っていたよりも小さくて、あまりにも無造作に置かれているので、そこにあると知らなければ通り過ぎてしまいそうな石造物。 

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見れば見るほど不思議な構造のデザイン。酒を作る道具であったとか、天文観測に使われたとか、諸説あるそうですが、その存在は未だ謎に包まれています。近年の研究で、この丘陵地全体が人工的に造成されたものとわかったそうです。

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そして飛鳥めぐりの最後に向かったのが飛鳥寺。596年に蘇我馬子によって建てられた日本で最初の大寺院。現在はこじんまりとした境内ですが、創建時の飛鳥寺は東西約200m,南北約00mという広大な敷地の大寺院でした。

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本尊の飛鳥大仏は、日本最古の仏像と推定されています。火事で顔と手以外が消失するなど災難を経ながらも、その素朴な魅力を秘めた微笑を今日に伝えてくれています。

この大仏の前に座ってそのお顔を見上げていたら、住職さんが出てきてくださって「この飛鳥大仏は、1400年以上前からここで同じ場所に鎮座しておられます。聖徳太子も推古天皇も、ここで同じように大仏様に向き合っておられたと思うと感慨深いですね」と話してくださったのが心に残りました。

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飛鳥寺の西門から少し歩いた先に、蘇我入鹿の首塚がありました。ここに首が埋まっているとの俗説もあります。世の趨勢を極めた蘇我氏も今は昔。周りにはのどかな畑が広がり、首塚の周りには可愛らしい菜の花が風に揺れていました。切ないですね。 

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夕刻の日に照らされる飛鳥寺。今回の飛鳥めぐりは、この長閑な田園風景を目に焼き付けて、ひとまずの締めくくり。(この後駅に行く道を間違えて迷った話ははしょりますね...笑)旅はまだ続きます。

旅の三日目。この日は奈良市街地周辺を回る予定だったのだけど、急遽予定を変更して「三輪 大神神社」に行ってみることにしました。飛鳥めぐりをしていたら、やっぱり三輪にも行きたくなってしまったので。。。

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パワースポットとして有名な三輪の神社。この時期の観光客は少ないだろうと思っていたのですが・・・駅を降りたら大変な人の賑わい。参道へ続く道にはたくさんの露店がぎっしり並んでいました。あまりの人の多さに面食らってしまったのですが、それもそのはず、この日は毎月開催されている「おついたち参り」の日だったのです。

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大神神社への参道。周りにはうっそうとした古木が生い茂り、奥へと進むに連れて、ついさっきまでの喧噪が嘘のように神妙な雰囲気が漂ってきます。

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大神神社は日本最古の神社と称されています。何を持って最古とするかは諸説ありますが、この国の神話の成り立ちに三輪が重要な位置を占めたことは確かなことでしょう。大神神社は三輪山をご神体としているので、拝殿のみで本堂はありません。三輪山そのものが信仰の対象なのです。自然崇拝のアニミズムの性格を随所に色濃く残していて、境内全体には独自の気配が漂っていように感じました。

ふと、境内のあちこちにお酒と卵が置かれていることに気づきました。大神神社には蛇信仰があって、蛇は神様の使いまたは化身と考えられているのです。「蛇へのお供えだから、卵とお酒」なのだと、帰りに立ち寄った酒屋さんで教えていただきました。願い事とともに卵をまる飲みしてくれるそうですよ。

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三輪山周辺にはたくさんの神社があって、全部回っていたら丸一日あっても足りません。半日程度で三輪のことを知ろうと思っても、土台無理でした...。また仕切り直して、ゆっくりと三輪詣でをしたいと思っています。その時は三輪山にも入山してみたいな。

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「大美和の杜」の展望台から見渡す、大鳥居と大和三山。この日はあいにくの曇り空でしたが、晴れていれば素晴しい景観なのでしょう。。

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さて、三輪と言えば「三輪素麺」。朝からずっと歩き続けてくたびれたので、友人が教えてくれた三輪素麺の銘店「森正」で昼食をとることにしました。神様よりも、美味しいものへの執着の方が深いので。。(笑)

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ここの素麺はとてもきめが細かくて繊細な味わい。左が森正の「にうめん」。シンプルな出汁の加減が素晴しい。右は「釜揚げ」。こちらは太素麺は使用していて、コシがあって食べ応えがある。

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そして絶品の手づくり柿の葉寿司! 一口食べると品の良い風味が広がり、そして切れの良い後味。私が今まで食べた柿の葉寿司の中で一番美味しかったな。

再び三輪駅に戻って来た頃は、また小雨が降り始めていました。三輪から桜井に移動して、前夜に奈良町の飲み屋の店主が勧めてくれた聖林寺に行ってみることに。

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桜井の駅からバスで約20分。聖林寺は、山村の中にひっそりと佇む小さなお寺。本堂には「子安地蔵大石仏」が鎮座しています。まんまるなお顔で可愛らしい。安産・子授けのお地蔵様として親しまれているそうです。

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と言っても、多くの人が聖林寺を訪れる理由は、何といってもそこに保管されている「国宝  十一観音」。その優美さは、一目見て言葉をなくしまうほど。その衣の優雅な曲線。指一本一本の柔らかい動き。穏やかでありながら凛とした表情。なんという美しさ。

アメリカの哲学者フェノロサが岡倉天心らと古仏の調査で訪れたとき、この十一面観音の美しさを絶賛し「ミロのヴィーナスにも匹敵する」と語ったそうです。実像は、写真では伝わらない魅力を秘めています。美しいもの愛する人なら、必ず一度観に行った方がいいでしょう。

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